自分より年上、または立場のある人から強い言葉で責められた
言い返したいことがあったけれど、何も言えなかった
または、言い返したけれど、全く理解されなかった
色々な感情が湧いてきて涙が溢れてくる
相談する人がいない
気持ちを落ち着けたい
※ 感情をじっくりと扱うセルフケアの方法も紹介しています。本記事は一時的な感情の落ち込みをケアしたい健康な方向けのものとご理解ください。
はじめに
スポーツの世界では、残念ながら今でも上下関係が存在しています。
年上の人が偉い。指導者が偉い。
プレーヤーは年上のいうことを素直に聞くべきだ。
プレーヤーは指導者のいうことを素直に聞くべきだ。
このような考えの人が、今でもたくさんいることを否定できません。
私自身は、人からのアドバイスを素直に聞く人が、伸びる人だと思っています。相手が年上であっても、年下であっても、自分と異なる経験をしている人からの言葉は、自分に新しい視点を与えてくれることがあるからです。
ただし、そのアドバイスを聞き、受け入れるかどうかは、各自が取捨選択するものだ、という強い信念があります。相手がどんなに正論を言っていたとしても、どんなに自分のためを思って言ってくれているとしても、自分自身が「受け入れたくない」と思うなら、それを選択する力が誰にでもあり、そうしてよいと考えています。
その大前提にあるのが、お互いに「人として対等」であるということです。
様々な経験、知識、年齢、立場など多種多様な人がいる中で、全員に共通しているのはお互いに「人として対等」ということ。
「人として対等」であるからこそ、ときにあなたが受け入れられないことには「NO」と言っていいのです。年上だから、立場が上だから、その人が言ったことは全員が「YES」と言わなくてはならないことはありません。
もちろん、あなたの周りにはたくさんの人が関わり合い、サポートしてくれる人の存在もあることでしょう。
だから何でもかんでも全て「NO」でいいということではありません。それはあなたもわかっているはずです。
だからこそ、いつも「YES」と言っているあなたが、本当に「受け入れられない」と感じることには「NO」を表現してもいい世界であると信じてほしいのです。
あなたが「NO」を言いたいときに、言えない世界。言っても理解されない世界。今あなたはそんな世界で孤独を感じ、この記事を読んでいるのかもしれません。
自分よりも年上の人や、立場のある人から、心無い言葉を言われて動揺していることと思います。
まずは、この記事と出会ってくれたことに、お礼を言わせてください。
それから、そのような辛い思いをしたにもかかわらず、自分自身をケアし、再び立ちあがろうと考えているあなたに、敬意を表します。
あなたはきっと、大丈夫です。この経験から、あなたに必要なことを学び、選び、より強くしなやかなあなたへと大きく変化していきます。
だから、まずは傷ついた今のこころを癒す「セルフケア」を、一緒にやっていきましょう。
無理にやる必要はありません。記事の中で、これはやってみたい、できそうだ、と思ったものからやってみてください。
今のあなたに必要なことは、外からの刺激を防ぐことと、あなたの内側の力を信じることです。
⚪︎ 無理して行わない
セルフケアは自分1人で気軽にできるのがメリットです。その反面、人よっては1人で抱え込みすぎて、悪化してしまうことも考えられます。
気分の落ち込みが1〜2週間以上続くときは、必ず身近にいる信頼できる人や、第三者の相談窓口があれば相談するようにしましょう。
セルフケアはあくまでもあなた自身の傷ついた気持ちをケアするものであり、他者を傷つける人を容認するものではありません。
セルフケアで大切なこと
1人になれる場所で
今あなたはどこでこの記事を読んでいますか?
自宅、宿舎、合宿所、移動中の車内、電車、新幹線や飛行機、競技場、体育館、トイレの中、など。
これからお伝えするセルフケアでは、まずあなたの今感じている感情を一番最初にみていきます。
そのため、周りに人がいる環境では、セルフケアの妨げになることがあることを知っておいてください。
できれば自宅で1人になれる場所で行うことをおすすめします。
自分を一番に考える
どんな感情が出てきても、自分を100%肯定してください。セルフケアはあなたがあなた自身のために行うものです。
主語は「私は」「私が」
普段、人に気を遣っている人や、真面目に、謙虚にいようと頑張っている人は、自分よりも相手を主語にして、考えがちです。
セルフケアのときは、主語を相手にするのではなく、主語を私にします。
「あの人が厳しい言い方をしたのは、きっと私のためを思ってのことだ」
→あの人が厳しい言い方をしたのは、きっと私のためを思ってのことだ。でも私はとても怖かった。私はとても傷ついた。
「原因は私だ。あの人は正しい」
→原因は私だ。あの人は正しい。でも、私はこう思っている。私はこう言いたかった。
色々書きましたが、ゆっくりやっていきましょう。次はセルフケアのステップを書いていきます。
ケアのステップを知る
セルフケアのステップは3段階。
Step1 感情を吐き出す
Step2 自分を受け入れる
Step3 考えを整理する
Step1今あなたの中にある感情を出てくるままに感じます。
Step2 感情を感じ切ったら自分を受け入れます。
Step3 考えを整理するために紙とペンで書き出します。
Step1 とStep2 はセットで行います。感情を感じる、自分を受け入れる、また感情が出てきたら感じる、受け入れる…を繰り返します。
気持ちが落ち着いてきたら、Step3 で頭の中にあるものを整理し、前へ進むためのワークをします。
具体的なやり方を見ていきましょう。
Step1 感情を吐き出す
一人きりになれる場所で座ります。
ゆっくりと深呼吸を繰り返します。
今、どんな感情が、あなたの中にありますか?
どんな感情も、あなたに必要なことを教えてくれる、贈り物です。
深呼吸をしながら、湧いてくる感情をただただ、感じます。
感情が動いていることを感じながら、その瞬間に気持ちをゆだねます。
涙が出てきたら、そのまま解放しましょう。
この時間は、あなたがあなたのために過ごす、とても大切な時間です。
普段、感情を大切にしていますか?
仕事やスポーツでなにか問題が生じたら、それを解決するためには論理的な思考や冷静な分析が重視されます。
けれども、今のあなたのように感情が大きく揺れているときは、まずはその感情をしっかりと感じることが先決です。
表に出てこようとしている感情に蓋をして、思考を働かせようとしてもうまくいきません。
まずは感情をしっかりと吐き出します。涙が出てくるなら、思い切り出しましょう。何かを叩きたい衝動が起こったら、あなたの身体を守るため、柔らかいクッションなどに相手になってもらいましょう。感情と身体は一体です。体を使って我慢せずに表現します。
Step2 自分を受け入れる
どんな感情が出てきますか?
すべての感情に、良い・悪い、という評価は必要ありません。
「出てきてくれて、ありがとう」
感謝の気持ちを伝えながら、今のそのままの自分を受け入れます。
心臓の辺りに手のひらをおいて、その鼓動を感じながら、深呼吸を繰り返します。
今、あなたが一番大切にする相手は、あなた自身です。
感情がしっかりと表現されると、次第に気持ちが落ち着いてくることを感じます。自己嫌悪や自己不信など、自分を否定したい感情が出てくるかもしれません。そんなときは、それをそのまま感じ、受け入れていきます。自分を受け入れるということは、自分を否定したい気持ちすら「今、自分を受け入れられない私がいるんだね」とすべてをそのまま受け入れることです。
Step1→Step2→Step1→Step2→・・・と何度か繰り返しながら、自然に任せながら、ただただ感じていきます。繰り返すうちに、だんだんと感情があなた自身に受け入れられ、気持ちがスッと軽くなるのを感じるでしょう。
それがStep3へ進む合図です。
Step3 考えを整理する
紙とペンを用意します。
最初に、あなたに起きた「出来事」を書き出します。
例 ◯◯さんに「お前はまったく成長しないな。何考えて練習してるのかわからない。そんなんだから年下のやつらにどんどん抜かれていくんだ」と言われた。
その時のあなたの「考え」を書き出します。
例 久しぶりにきて、何言ってんの? あんただって何も成長してないじゃん。 なんで私がこんなこと言われなきゃいけないの?
出てきた「感情」とその強さを書き出します。
例 怒り70% 悲しみ30% 困惑30%
(感情の強さを0〜100%で表す)
「身体の変化」があれば書き出します。
例 心臓がドキドキする。体が熱くなる。足と手に力が入らない。
あなたはどんな「行動」をしたか書き出します。
例 言い返したかったが、何も言えず、笑顔で「そうですよね。がんばります。」と答えた。
これは、認知行動療法と呼ばれるカウンセリング技法の1つです。今回はそれを応用します。
「出来事」「考え」「感情」「身体感覚」「行動」を1つずつ区別して書くことで、物事を客観的にみることができます。
よく、冷静に判断するためには感情は抜きにして考えるのが良い、と言われますが、私たちは感情とは切っても切り離すことができない生き物です。
感情を抜きにせず、湧き起こってきた感情をしっかり受け止めて、その上で「私はどうしたい?」「私に何ができる?」を考えましょう。
それでは、紙に書いたものをもう一度みてみてください。
その後、次の問いをご覧ください。
この経験から、私にとって一番プラスとなる学びは何か?
私はそれを、どのように活かすか?
私が目指したいのは、何か?
私が手に入れたいものは、何か?
私はそのために、まず何をするか?
私がそれをやることで、何が変わるのか?
私がそれをやることで、周りにどんな影響を与えたいか?
問いは、あなたの中にある答えを引き出すものです。すでにあなたの中には答えがあると感じながら、あなたにとって必要だと感じた問いに答えてみてください。
あなたの身に起こったことは、すべてあなたにとっての大切な学びの機会です。今回の経験から、あなたならではの答えを探して、あなたの目指す方向へ勇気をもって進んでいくことができます。
まとめ
いかがでしたか。年上・立場のある人から強い言葉で責められたときのこころのケアについてワークとともに説明してきました。
繰り返しになりますが、感情は私たちにとってとても大切なものです。メンタルを整えるためには、いつでも「前向きな気持ち」じゃなければならない、いつでも「素直な私」じゃなければならない、ということはありません。ときに、苛立ち、相手のせいにしたくなったり、自分に自信がなく自分を責めたくなることもあるでしょう。
メンタルを整えるということは、そんな感情のアップダウンがおきたときに、そこに蓋をせず、目を逸らさずに、自分なりに向き合っていくということです。
ときに、向き合いたくないこともあるでしょう。そんな自分すらも、自分で「OK」と言える。気分があがってきたときにボチボチ向き合ってみるか、とそれが自分のペースであるなら、それでもいいのです。
自分のことをよく知って、丁寧に付き合っていくことで、自然とメンタルが整っていきますよ。
無理せず、できることからやっていきましょう。

まずは自分を一番大事に考えてくださいね。
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